ロマ3ダヨ! 白雪姫 2


 魔女モニカが化けた老婆ことバイメイニャンが、お礼の印にとお節介にも籠に入れた6つの毒リンゴを白雪姫が同居している小人達の小屋に無理矢理置いて帰ってしまいました。テーブルに置かれた毒リンゴを眺めながらミカエルとユリアンは。
「ミカエル様、このリンゴを使って今夜はカレーにしましょう!」
 ユリアンは目を輝かせて夕食のメニューを提案しました。
「夕食をカレーにするのは良かろう。 だが・・・胡散臭いリンゴだな。 奴らに食させて問題がないようなら、カレーの材料に使うが良い。 フッ、その前に奴らが勝手に全部食すだろうがな」
 ミカエルは魔女が置いて帰った毒リンゴを『胡散臭いリンゴ』と判断し一瞥した。そして、下僕のユリアンに冷笑を浮かべて命じました。
「ミカエル様がおっしゃるなら、オレもそのままにします。 でも・・・」
 ユリアンは言葉を濁してしまいました。止まってしまった言葉にミカエルは促した。
「でも、婆さんの好意で貰ったんですよ。 それを『胡散臭い』と言ってしまうなんて・・・」
 とうとう口篭もってしまった。
「フン、そのように素直だとすぐに暗殺されてしまうぞ」
 ミカエルは、冷たい口調で心優しいユリアンに答えたのでした。
「では、我々も出かけるとするか」
 ミカエルは外出する準備を始め、ユリアンが場所を聞こうと思いつつ、自身も外出の準備を始めました。そして、二人は森の端にある国境の散策に出かけてしまいました。
そう、テーブルの上には、バイメイニャンと名乗った老婆がお節介で置いて帰った毒リンゴを残して。


 魔女が去り、ミカエル達も広大な森の国境付近の散策に出かけてから数時間後。
「よーう! 帰ってきたぜ!」
 ポールが、威勢の良い声で誰も居ないアジト兼小屋に戻ってきました。
「お、アレはリンゴではないか!ハハハハハハハハ・・・正義の味方への日ごろの感謝だな!」
 ポールの脇からデブロビンがテーブルに置かれたリンゴを見つけました。
「いえいえ、アレは私の歌へファンからのお届けモノです♪ ロビンさんのモノでは決してありません♪」
 詩人が、デブロビンの一言を言下に否定しました。
「なんだとー! このへボ詩人! お前の歌にファンなんか居ないだろうがっ!!」
 デブロビンは、声を荒げて詩人に掴み掛かりました!
「ロビンさん、今何と言いましたぁ!! 私にファンが居ない!! 嘘おっしゃい!!」
 言われた詩人も、ムッと来てデブロビンの両頬を摘み、顔を引き伸ばしました。二人が小屋の入り口で取っ組み合いを始めてしまい、後ろに立っていたブラックとハリードが怒鳴り散らし始めました。
「手前ぇら、うるせえぞぉ!! 静かにしやがれ!!」
 フラックが怒鳴りながら二人を蹴飛ばしました。ロビンと詩人は、部屋の中まで勢い良くブラックの蹴りに飛ばされてしまいました。入り口が開いたのでハリードとウォードが入って来るなり、テーブルの上に置かれていた白雪姫曰く『胡散臭いリンゴ』を見つけました。ブラックと時同じく、ハリードも毒リンゴに気が付きました、そして。
「美味そうなリンゴだな。 俺のモノは俺のモノ、お前らのモノも俺のモノ、文句無いな?」
 ボスのハリードがきっぱりと宣言しました。
「ボス、そりゃないっすよ!」ポールがすぐに、思いっきり抗議を言いました。
「正義の味方への労いなのだよ。 ハハハハハ・・・!!」デブロビンも自慢気に言下に否定しました。
「いえ、これば私の歌に対してファンからのプレゼントなのです!」そして、詩人も乱入してきました。
リンゴ〜♪ リンゴ〜♪ 私への〜♪ ルルる・・・アビョッバッ!!」
 歌い始めた詩人にポール達がタコ殴りを始めた背後、赤い巻き毛の影が迫って来た!
「歌うんじゃねぇ! バカヤロゥ(巻き舌)!!」
 ウォードは毒リンゴを検分していたのだが、詩人が歌い始めてしまい。そこで彼はリンゴを掴んだまま、怒鳴りながら『バカヤロゥ(巻き舌)』と怒りの雄叫びを巻き舌に、そしてパワーに変え対詩人用に開発した必殺『バカヤロゥアッパー』を詩人の顎目掛けて放ったのでした!
 詩人は、毒リンゴとアッパーの二重の衝撃により一撃で倒れ伏せてしまいました。しかし彼の背中に微笑む太陽は、不気味な微笑みを浮かべていました。ウォードが握っていた哀れな毒リンゴは、見るも無残に砕け散ってしまいました。ウォードの『バカヤロゥアッパー』を皮切りに、小人達は毒リンゴ奪い合いの大乱闘の殴り合いを始めてしまいました。


 夜半遅くにミカエルとユリアンが小屋に帰って来ました。
小屋の中を見渡すと奴らはいませんでした。早速小屋の中に入った二人が目にした光景は・・・。壁にリンゴがめり込み潰れた跡や、殴り合いで倒れたテーブルや破壊されたイスなど廃墟と化していました。
「フン、胡散臭いリンゴで乱闘とは・・・バカバカしい」
 ミカエルは小屋の中の状況を一目で検分後、すぐに推理を終え冷笑を浮かべて結論を言いました。
「えっ、そうなんですか?! リンゴのための乱闘・・・」
 ユリアンも説得力が大いにある現場なので、すぐに納得をしてしまいました。
「とりあえず、今夜は休むぞ。 適当に寝る場所を作らねばな」
 ミカエルは、遅いから休む場所を作りにいきました。しかし、ユリアンは壁にめり込んで原形を留めていた毒リンゴを見つけてしまいました。
「しかし・・・何処に行ったんだろう? あ、これで今夜はカレーを作ろう。 ラッキーだ♪」
 ユリアンは、残った材料を合わせてカレーを作りました。その頃、小屋を離れた小人の集団は、籠の下に入っていた魔女が残した宝の地図を見つけて宝捜しの旅に出て行ってしまいました。

 鏡で様子を見ていたモニカは。
『暗殺は失敗しましたが、追い出す事には成功しましたわv アレは魔法で作った宝の地図ですのよ。
目的地が徐々に変わっていくから一生見つける事なんて出来ませんわv オホホホホホ・・・』
と、ミカエルに負けないくらい底意地の悪い笑みを浮かべていました。魔女が、迷惑な小人達を森から追い出した真実は誰も知りませんでした。

 ミカエルは寝室をどうにか整理し終えたところ、ユリアンが夕食のカレーを作った旨を聞いて居間に戻ってきました。ユリアンは、水が無くなっていた事に気が付いて井戸にいました。 
 そして、ミカエルはユリアンが戻るなりカレーを口にしたところ、悲劇が起きてしまいました。
「ぐっ、ユリアン。 ・・・カレーに何か入れたのか? !!・・・壁の跡、まさか・・・不覚」
 壁にめり込んでいたはずのリンゴの姿が消えていた事を知り、舌打ちをしながら朦朧としてきた意識をミカエルは手放してしまいました。倒れたミカエルにユリアンは駆け寄って、ミカエルを必死に起こそうと色々と頑張りましたが、とうとう起きることはありませんでした。


 姫が倒れた翌朝、ユリアンは白雪姫をガラスの棺に寝かせてずっと側で泣き続けていました。
「うっうっうっ・・・ミカエル様ぁ〜!! ミカエル様が死んじゃったよぉ〜!!」
 泣き続けているユリアンの背後から、凛とした声音が静かに聞こえました。
「たのもー! あら、そこの小人よ、一体どうしたの?」
 ユリアンの背後に立っていた人物は、銀色の美しい髪を肩から軽く結えて海を思わせるような青い瞳がユリアンを見つめていました。
「・・・・・・」
 振り返ったユリアンは、銀髪の人物の声に反応をしませんでした。反応を示さない小人に対して、来訪者はガラスの棺に歩み取ってきました。
「まぁ! なんと言う美しさ。 ・・・それにしても」
 銀髪の美貌の来訪者の言葉が途切れました。
「え? あ、俺はユリアン。 あなたは誰ですか? わっ、・・・ミカエル様とは違った美人さんだ!」
 ユリアンは初めて銀髪の人に向きを変えて、質問と同時に余計な事も口にしました。
「私は、カタリナだ。 この森より東の国の王子だ」
 カタリナは、ユリアンに名を名乗り再び言葉を続けました。
「不思議だ、この方とは夢の中で毎晩出会っていた覚えがある。 このガラスの蓋を開けても良いな、顔を真直に・・・ ミカエル様を起こしたいの」
 カタリナ王子は、ユリアンに一声かけるとすぐにガラスの蓋を開けてミカエルを抱き起こしました。そして、僅かに脈があることを察したカタリナは、咄嗟に持参していた水筒に万能薬を溶かし口に含みました。
 そして、王子は目を閉じて静かに、眠るミカエルの口に自身の口を当て、口内を優しく愛撫をしながら薬を流し込みました。それから数回、カタリナは口移しで万能薬をミカエルに全部飲み下させた後、徐々に青ざめていた顔色が朱に染まり奇跡的な回復を遂げました。ミカエルは、その青い瞳にカタリナの姿を映し出しました。
「・・・うっ、私は・・・」目を覚ましたミカエルは、身体を起こそうとしました。
 だが、抱いているカタリナはミカエルを優しく抱きとめたままでした。
「私は、この森から東にある国の王子カタリナです。 あなたは今まで生死の間を彷徨われていたのです。 どうかご無理をなさらないで下さい」
 カタリナは、目覚めたミカエルを優しく制し、再び言葉を続けました。
「ミカエル様、あなたのお姿を夢の中でいつも見ていました。 目を覚まされて何よりです」
 優しく静かな声でカタリナは、目覚めたミカエルに言葉をかけました。
「・・・カタリナ王子か、礼を言う」
 意識が次第にはっきりとしてきたミカエルは、カタリナに礼を述べました。
「ですが、不思議です。 夢の中のあなたは女性ではなくれっきとした王子でした」
 カタリナは、夢の中の出来事と知りつつ自分の疑問を口から漏らしてしまいました。
「・・・私もだ。 夢の中でドレスを着たあなたとワルツを踊っていた覚えがあるのだ」
 ミカエルもカタリナと同じ疑問を切り出したのでした。
「えっ?! では、私たちはお互いに・・・身分を偽って生きていたようですね」
 カタリナは、自身の秘密を語れる相手と察し告げたのでした。
「そうか。 だが、私は庶子の出だぞ。 出生を偽る事などできぬ、ましてや子が親を選ぶことなど不可能な事だ。女に偽られ城に、今までな。 屈辱だが耐えてきた。 それでも王とは何たるかは心得ている、例え義母が何を言おうと私は王位に就くつもりだ」
 ミカエルも今まで偽ってきた事実をカタリナに告白しました。
「私も、世継ぎが生まれず男として、王子として生きてきました。 ですが、女性としての心は捨てていません!  今、貴方と出会って自分の気持ちに、素直になることが出来ました」
 カタリナは、一人の女性としてミカエルに真摯な眼差しを向けて全てを告白しました。カタリナの言葉が静かに心に染み込んでいく。ミカエルもまた、自身の過去への清算と共にカタリナと言う一人の女性を愛し守っていこうと決意を固めました。ミカエルはようやく起き上がれるようになり、カタリナと向き合った、そして。
「ミカエル様、私は父と戦う決意があります。 貴方と・・・、ミカエル様と一緒になりたい。 いえ、ずっと一緒に居たいのです!」
 カタリナは、自分の素直な気持ちをミカエルに告白しました。カタリナの告白が、自身の凍りついた心を溶かすように染み込んでくることを感じる。
(私が本当に欲しいものは・・・)
 言葉にならない声を自身に呟き、自嘲的な気分になるがそれも一瞬の事でした。そして、ミカエルはカタリナの真摯な告白に対し深く頷いて言葉を紡ぎました。
「カタリナ、お互いに己を偽るのは辞めよう。 そして、ずっと私の傍らにいてくれ! そして、お前と共に国を守っていこう」
 ミカエルは、そのまま彼女と抱き寄せお互いの愛を確かめ合うと、目を伏せて静かに永遠の愛を誓った口付けをしました。

 二人が抱き合っている所を、ユリアンは一人外れて見ていました。
だが、背後から腕を引かれて連れて行かれてしまいました。 そして二人のいる小屋から離れた所で、彼は腕を引いていた相手を見ることができました。
「あの〜、オレを一体?」
 ユリアンは、おそるおそる腕を引いていた金髪の女性を見つめて問い掛けました。
「貴方がユリアンですね。 私はモニカです、ミカエルの義母ですの」
 モニカはユリアンにニッコリと微笑みながら明るい口調で、義母あることを告げました。
「ええっ?! ミカエル様のお義母さんですか・・・見えない」
「当たり前です!! 私は、彼の父親と再婚したのですよ!!」
 ユリアンの年齢を感じさせる発言を聞いたモニカは、すぐにツッコミを入れました。
「はい・・・すみませんでした」ユリアンは、すぐに謝りました。
「まぁ、素直な方ですね、あの二人は良い夫婦になるでしょう。 (夢の中で、毎晩あれだけ会わせていたのですから・・・当然よね♪) 貴方はこれからお一人のようですし、私の下僕になりませんか?」
 モニカはしれっとした態度なのだが、優しい声音でユリアンに手を差し伸べました。
「オレって、美人さんと縁があるみたいだな。 オレでよければモニカ様、お供します!」
 こうしてユリアンは、喜んでモニカの下僕になりました。


 その後、白雪姫だったミカエルは小人達を買収し手に入れた森に人々はいつしか『100オーラムの森』と名を付けられていました。そして、姫となったカタリナの国と広大な『100オーラムの森』の全てを併合して巨大国家の国王となりました。

二人は永遠の幸せを手に入れて仲良く暮らしましたとさ。



めでたしめでたし♪

配役
白雪姫→ミカエル様 王子様→カタリナ 悪い魔女→モニカ
変装した魔女→バイメイニャン
7人の小人→
暑い奴ら(ハリ−ド・ブラック・ウォード・デブロビン・詩人・ポール)+ユリアン


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