レオニード城の暑き闘い 2




 ポールが挑発打ちを決めて、ヤミーがウォードに向かって攻撃を仕掛けてきた!ウォードは、チャンスと言わんばかりに無刀取りで武器を取り上げた。ヤミーが持っていた武器は何と、ただのブロードソードだった。ウォードは怒りくってこう言った。
「畜生!なんだよあの骸骨ヤロー!! これ見ろよ! ただのブロードソードだ!!!」
 それを聞いた他のメンバーは『何だあの骸骨野郎ろくな物を持ってねーじゃん』とか、「ふざけんじゃねー!」と言う声音の口調で好き放題に言葉を口々にしたのだった。詩人が前に出てきて「ええい! あんな奴こうしてやる!」と言うなり脱いだマントを投げつけた。それを見たメンバーは急いでその場をダッシュで離れた。ミカエルは、事の成り行きで嫌な予感を覚えてとっさに避難した。そして、マントがヤミーに接触した。
ドッカーンッ!! ズドドドーーン!!!
そして、あたり一面に大音響が響いた。


 ミカエルは、何が起こったのか様子を見にきてみると・・・ヤミーが立っていた辺りには何も無かった。辺り一面、埃が舞っていて周りが良く見えないのだが、城の壁や柱、手すりにヒビが入っていたりして、見るも無残に破壊されていた・・・。
「ハハハハハハハハ・・・・・・・・・。 やりました! 私の一撃で倒しました! 早速詩にしないと・・・。 あ!みなさ〜ん、えっへん。 これからは、私の事をボンバー詩人と呼んで下さい♪」
 あっけなくヤミーを爆殺した詩人が、自慢げに1人で喜んでいた。それを聞いてブラックは、横から肘鉄食らわせてこう言った。
「へっ、テメーが投げたのは、マントの裏に無理やり縫い付けた精霊石99個セットだろ! 俺様は魔海候フォルネウスに、モンスターが落とした火星の砂を地道に集めてマントに無理やり縫い付けた99個セットを投げて、アビスゲートもろとも吹き飛ばしたんだぜ! 1人でボンバー呼ばわりさせるな。 このボケッ!」
 どちらにしろ、たがが外れた会話。いや最初から、だがなど全く存在しない奴らだ。ミカエルはよく考えると、とてつもなくセコイ会話を聞かされて、無性にぶん殴りたい気分に囚われていた。


 安い武器を持っていたヤミーを一思いに爆殺したセコイ冒険者達だった。彼らは、さらに地下深く進んで、豪華そうな寝室の宝箱から見るからに高価そうな宵闇のローブを見つけた。
詩人「装備してみたいですね〜♪」と。
ポール「おれが装備したいんだ!」と。
 同じタイミングで発言をしたこともあって言い張りケンカになってしまった。
「こういう時は、いつもの一発芸で勝負して、受けた方が装備するのがいいのでは?」
 デブロビンが提案をした。こうして宵闇のローブ巡る、ポールvs詩人による一発芸対決が始まったのだった。
ポール「アイ〜ン!!」と同時に。
詩人「ちょっとだけよv(ぺらっと・・・)うごぉ〜・・・」
 詩人の一発芸は気持ち悪く、周りからボコボコに袋叩きにされた。それにより、この勝負はポールに軍配が上がった。こうして、ポールはローブを服の上から、無理矢理着込んで装備をした。だが、・・・ズルズル引き摺っていてとても似合わなかった。
ミカエルも、詩人をボコボコの袋叩きにした一人に加わっていた事は、言うまでも無かった・・・。


 暖炉のある豪華そうな部屋の片隅にあった宝箱の中には、なんと貴重なアイテムである竜鱗が入っていた。 だが・・・時すでに遅し、ハリード達の持ち物は一杯になっていた。ミカエルは、『フッ、欲張って全部持って行こうとするからだ』と、内心ツッコミを入れていた。
ハリード「竜鱗だぜ、持っていこうぜ」から。
ポール「持ち物が一杯だよ」に続き。
ウォード「でも捨てるのはごめんだな」きっぱりと言い放つ。
詩人「いっそ、このままにしておきますか?」の一言に反応した5人は。
「見捨てるのは絶対に許さーん!!」と、野太い怒鳴り声がハモって返ってきた。竜鱗を眺めていた、ウォードの頭上で電球が光り閃いた!閃いたら、即行動と言うようにウォードは。
「よう、ロビン。 あんた良い腹してるよな」とロビンの肩に、がっしりとした逞しい腕を回して言うのだった。
「・・・突然何を言うんだ?」
 ロビンはパンパンに膨らんだ、真っ赤なハットの大男の腕から逃げられない。
「だからよぉ、ロビン。 おめぇのその腹でよ、あの竜鱗を覆ってテキトーな布で巻付けるんだよ」
 赤いハットの男はこう言った。
「それ名案じゃん!」と最初に言ったのはポールだ。
「よ〜し、『飯だ急げ!』で『膳は急げだ!』って言うしな。 ロビン、さっさと服を脱ぎな」
 ブラックは、ロビンの服を剥ぎ取ろうと指をくねらせながら近寄って行き。
「そうだよな。 一日五膳とも言うしね」
 またも、ポールが爽やかに言った。ミカエルは、ポールの爽やか発言に"・・・『善は急げ』と『一日一善』は意味が全然違うぞ。 こいつらの一日の食事は、最低でも5回と言うことか? ・・・・・・"と鋭い指摘と知りたくない事を知ってしまい、頭痛が酷くなってしまった。

 デブロビンもウォードの提案を理解したらしく。
「ハハハハハ・・・・・。 私の腹が役立つのなら喜んで脱ごうじゃないか! さあ、竜鱗を巻くのだ!」
 単純なデブロビンは自慢にならない事を、必要以上にカッコつけて言ったのだった。この中で最も常識的なミカエルは、『見たく無いのに、気色悪い事は辞めてくれ〜!』とすでに目が語っていた。だが、ミカエルの願いは虚しく無に帰り、ロビンはマントとズボンだけを残して喜んでとうとう服を脱いでしまった。
「ロビンさん、貴方って、出べそだったんですねぇ♪」
 詩人は、なんか嬉しそうな響きで腹を見せたニセロビンにツッコミを入れた。
「これじゃあ、天知る! 地知る! ロビン知られちゃったわv いや〜ん♪って感じだよなー」
 ポールも陽気に言った。
「オメーら、うるせーぞ! おっ、ロビン。 お前の腹に竜鱗がハマってこりゃ落ちないようだな」
 ハリードとブラックとウォードの3人がかりで、ニセ怪傑ロビンの腹に竜鱗を巻き付けている。
「あんたの脂汗なら、竜鱗の角で怪我はしないだろうから安心できるな」ウォードは呑気に言う。
「おい、ちょっと待てよ! 言い換えるとロビンの脂汗で、貴重な竜鱗がベトベトのギトギトになって、その上汗臭い匂いが染み込んで、余計臭くなると言うことになるんじゃないか!!」
 ブラックは、ウォードの言葉に反応したがもう遅い。
「ブラック、今回は潔く目を瞑ろうぜ。 竜鱗を持ち帰るのが俺たちの使命だ」
 がめつい男達のリーダーたるハリードが、静かにそう言ってこの場は落ち着いた。気色悪いものを無理やり見せられたミカエルは、『何が使命だ! コンチキショーッ!!』と怒りを湛えた目が、そう語っていた。


 雪が一面に積もっている中庭を経由して、聖杯の置いてあるレオニードの部屋に、ようやく到着した。監視役で仕方なくついて来たミカエルは、各階の寄り道があまりにも長いから、あきれ返っていた。そして、レオニードが待っている部屋に到着した一行が目にしたのは・・・・・・。
「随分と時間が掛かったようでしたが、生きてここまで辿り着きましたか」
 真っ暗な部屋に佇む、レオニードの生首が迎えてくれた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ――――っっっっ!!!!
出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――っっっ!!!
生首がしゃべってるうぅぅぅぅ〜〜〜〜っっ!!!!!」
 それを見た不遜でふてぶてしい冒険者6人は、阿鼻叫喚の何重もの野太い悲鳴と叫び声が部屋中に響き渡り、大パニックになってしまった。野太い悲鳴の中に、ミカエルの大爆笑の笑い声が混じっていた。
 それが聞こえたらしいレオニード伯爵は「あの〜・・・ミカエル侯、そんなに笑わないでくれませんか」と、生首しか見えないままの姿で、溜息を吐きながら言った。
「アハハハハ・・・、すまない。 まさか伯爵が、暗い部屋で黒い紙を巻きつけた蜀台を、頭付近まで近づけて、生首しか見えない一発芸で迎えてくれるとは思わなかったのでな。 アハハハハハ・・・・・・」
 ミカエルは、一発芸をやった主を指差しながら、やっとの思いで返事を返した時には・・・。腹を抱えて拳で床をバンバン叩きながら、大爆笑をしていたのだった。


 程なくして、憔悴しきった7人は、レオニードが聖杯を取り出してハリードに渡したのだった。
「よっしゃー、聖杯GETだせ!!」ハリードは、ニンマリと言うのだったが・・・。
「ところで、先ほどの爆発による城の修理費は、勿論、貴方達が出してくれるのだろうね? 最低でも30万オーラムは請求させて頂きますよ」
 城を壊された城主は、抜け目なく当たり前の事を優雅に紳士のよな口調で言ったのだった。それを聞いたハリード達は、顔が真っ青になり、次には怒り心頭で城を破壊した詩人を袋叩きにした。それから彼らは、『・・・30万オーラム、どうするよ』と相談するのだったが、結論が出たようだ。
 ハリードは、脇で自業自得だと頷くように見ていたミカエルの腕をグイっと引き寄せて、耳元で囁くような声で商談話を持ち出した。
「なぁ、ミカエル。 お前の小遣いなら30万オーラム位、軽く持っているよな? へへへ・・・お前、俺たちよりも先に、懸賞額の高い凶悪犯をかなり捕まえているのを知っているぞ。 お前のシュミをユリアンに話したら・・・モニカ姫ではなく、お前のファンに間違いなくなるだろうよ。 この聖杯は、聖王遺物で貴重な一品だ。 そんな大層な品を、30万オーラムで快く買い取ってくれ!!」
「ツヴァイク公のセコイ願いは、どうするのだ?」
 ミカエルは、売主の脅しに冷めた口調で返事をした。
「うっ、修理費で大損するよりかは、ずっとマシだ! 頼む、ミカエル。 ロアーヌ侯爵様、一生の願いだ! 俺たちを助けると思って聖杯を買い取ってくれっ〜〜」とうとうハリードが、泣きついてきた。
「・・・仕方あるまい。 聖杯を買い取ろう」ミカエルは、しつこく泣き憑かれるのも気持ち悪くてイヤなので、観念して渋々と返事をしてしまい商談が成立した。
「さすが、ミカエル! そうこなくっちゃな。 恩に着るぜ!」ハリードは、調子よく言葉を返した。
「伯爵さんよ、ミカエルが聖杯を買い取ったんで修理費は、彼に請求してくれ! それじゃ、野郎ども退散するぜ!」
 ハリードがそう言って、城の修理費をどうにか捻出した暑苦しい冒険者達は、用が済んだと言わんばかりに・・・。いや、実際はそれ以上の請求費を要求される前に、早急に極寒のレオニード城をあとにしたのだった。


 そして、残った二人は。
「・・・伯爵。 私が、聖杯を本当に貰って良いのですか?」
 聖杯を30万オーラムで売りつけられたロアーヌ侯は、複雑な心境で言った。
「聖杯を手に入れた彼らから、買い取ったのですから、私には一切関係ありません。 貴方が持っている方が、聖杯も幸せでしょう」
 聖王から賜った主は、自分の手元から離れた物だから、もう関係ないという無責任な返事をした。
「フッ、いいだろう。 ならば聖杯をお土産でロアーヌに持って帰るとするか。 30万オーラムは、あとで部下に外交の名目で届けさせる。 それと良い職人も紹介しよう」
 開き直ったミカエルは、親友に職人の紹介と送金を約束して、彼らが手に入れた聖杯をロアーヌに持ち帰ることにした。

極寒のレオニード城に挑んだ暑い漢達による闘いは、こうして幕が下りたのだった・・・。




〜 お・し・ま・い 〜



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