今日は緑木の月1日、サラの誕生日です。
世界の中心地であるメッサーナ王国は、魔王時代から続く文化や商業が最も発達した国である。そしてここは、マイカン半島南部に位置する都市・首都ピドナである。
今や、世界経済の中心となったトーマスカンパニー本社である。社長室には、大よそ似つかわしくない服装の黒い髪を束ねた少年が、社長室に居たのだった。 「ねぇ、トーマス」声変わりの始まった低音ソプラノの声が室内に響く。 声の主は、死食を生き残った宿命の子である少年だ。 「なんだい、急に改まった口調で」 ロイドメガネを掛け直したトーマスカンパニー社長トーマス=ベントは、低いトーンの優しい声音で少年の緊張を解す。 「今日は、何の日か知ってる?」唐突に言ったのだった。 「今日? さて・・・、何だっけかな。 なんて冗談だよ、サラの誕生日か」 トーマスは、ニッコリと微笑んで返事をした。 「ちぇ、知らないと思っていたのにな」 どこか、悔しそうな声音で語っていたが、少年の瞳は笑っていた。 「で、君はサラとどうしたいんだい?」 早速、トーマスは少年が入室した目的に耳を傾けたのだった。 「うん、サラって普段、屋内に篭もりがちだろ。だから、サラを街に連れ出そうと考えたんだ」 少年は、考えていた事を全て話した。 「そうか。 そうだよな」 トーマスもどこか、思うところがあるような返事をした。 「じゃあ!」 トーマスの返事を期待した少年は目を輝かせていた。 そして、少年の視線に頷き返したトーマスだった。
―――トーマスの親戚宅にて。 一人窓を見つめていたサラは、物思いに耽っていた。そこへ、ドタドタとけたたましい足音と一緒に少年がノックなしに部屋へ入ってきた。 「キャッ、いきなりどうしたの?」 驚いたサラは、突然部屋に侵入してきた少年に彼女としては大きな声を上げていたのだった。 「いきなりは酷いよ〜、サラ」 驚くサラに少年は、心外そうに呟いた。 「だってお部屋に入る時は、きちんとノックをして入るものよ。突然、ドアを蹴破るように入ってきたら誰だって驚くわよ」サラも少年に対しては、どこまでも強気であった。 「はいはい、判りました。 僕が悪ぅざいました」 謝罪をどこか無責任に言うだけ言った少年。 「もう、これからはちゃんとノックをしてよね!」 念押しに、サラも返事をしたのだった。 「それで、何をしに来たの?」 気を取り直したサラは、少年が入室してきた理由を問うた。 「そうだよ! 忘れる所だった!! ねぇ、サラこれからトーマスと一緒に外出をしようよ!」 突然少年は、羽詰った表情に変わりサラを外出への誘いをしたのだった。 「ええっ! 今から?!」いきなり外出を誘われたサラは驚くのも仕方が無い。 「うん! そう! 今から。 トーマスが仕事にキリをつけて待っているよ」 少年は、息継ぎの暇無く捲くし立てた。 「突然言われるから・・・私、何も用意をしていないわ」 サラは、消え入りそうな声で返事をするが。 「準備? 何を?」 無頓着に、聞き返す少年だった。 「っんもう! 貴方ったら! 女の子は外出するときに少しでも身なりを綺麗にして歩きたいのよ」 少年の返事に、怒り出すサラだった。 「・・・判ったよ。 それじゃあ、準備が終ったらトーマスと一緒にピドナの街を散歩しよう」 少年は、サラを宥めるように言葉を返した。 「・・・でも、何で急に散歩に誘うの?」 サラは、疑問に思ったことを口にした。 「え? 今日、サラの誕生日じゃない。 だからトーマスと一緒にサラを祝いたいんだ、・・・僕は自分の誕生日を知らないから尚更にね」 顔を赤らめながら、彼女の疑問を素直に答えた少年だった。 「えっ、そういえば確かに。 私の誕生日だわ、ありがとう。 でも、トムは仕事が忙しいのに・・・」 サラは、トーマスはが自分の為に仕事を切り上げると聞いて口篭もる。 「どうして、黙るのさ。 僕もトーマスも君を祝いたいんだ。 トーマスも今日が何の日か知っていたし、仕事のことは気にしないで行こう」 少年は、優しく声音でサラに言葉を掛けた。 「・・・判ったわ。 すぐに準備をするね」 サラは微笑んで急ぎ準備に掛かる為、少年をトーマスの元で待ってもらう事を頼むのだった。
そして、二人の誘いを受けたサラは、始めは遠慮しながらも二人の好意を無駄にすると考えて外出する事を決めました。三人で楽しく街を歩いていたが、途中綺麗な可愛い小物が飾っているお店を見つけて中に入る事にしました。 「ねぇ、サラこの小物は可愛いよね」 少年が見つけた小物を見て喜ぶサラ。 「サラ、この花の飾りのブローチも似合うぞ」 トーマスも遠慮がちなサラの緊張をほぐす為に色々見繕った物を見せていたのだが・・・。少年曰く。 「トーマス、このワンピースはサラに似合うかな?」 「う〜ん。 もう少し、大人びていても良いと思うよ」 二人の会話が全てのきっかけとなり、サラに似合いそうな洋服探しに発展してしまいました。 「・・・洋服探し? そんな・・・。 私に合う服なんてないよ、だから辞めようよ・・・」 最初は、遠慮がちに答えていたのだが。 それもやがて、色々と買い物が進んでいき・・・。
いつしか時間が過ぎ去り。 ある店頭のショウウインドウを眺めていたサラは。 「ねぇねぇ、このドレス。 飾りのお花がピンク色で可愛いよねv」 ドレスに指を指しながら彼女の背後に控えているトーマスと少年の二人に声をかけたのだった。少年は両手いっぱいに、大きな荷物を抱えている。その表情は、笑みを浮かべているのだが。その実、疲れきった表情そのものを隠せないでいた。 一方トーマスは、予想以上に出費した為、財布の中身を調べていて、すっかり空っぽをとなった哀れな財布を見つめている所だった。
そして二人は。 『サラ、勿論、見るだけだよね?』 そう言わんばかりの眼差しをニッコリ微笑む彼女に向けていたのだった。
〜 お・し・ま・いv 〜
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