ジュリアス様の長〜い1日 1


 今日のチェスのお相手は・・・、なんだかジュリアスの執務室の前が騒がしいのは一体・・・?
ドアの隙間から部屋の中を覗いているのは、な、何とルヴァとリュミエールにオスカーがいるみたいですね〜。外も騒がしいような感じが、いくつもの視線を感じますね・・・。
 こんな所に茂みはなかったようなって・・・チャーリーと文句言いながらもちゃっかりオリヴィエまでいたりしまして、その隣に望遠鏡で部屋を覗きながらしっかりメモを取っているのはエルンストだ。木の上にはゼフェルがこの先の予想でもしているのかニヤニヤしていますねー。そんな中でチェスをしている相手は・・・ク、クラヴィスじゃあ〜りませんか。一体全体どうしてあのクラヴィスが何でここにきていらっしゃるのでしょう?
 チェスを楽しんでいる(?)お二人をおいておいて執務室のドアの前にいる三人は、もしもの事態が起こったときの為にオスカーがジュリアスを、リュミエールがクラヴィスを取り押さえてルヴァが仲裁することを三人の間で暗黙の了解となっているようで、中の様子をどきまぎしながら覗いているようだ。

 一方対局している2人も勝負に自信のあるジュリアスも何の予告もなく執務室に現れてチェスを誘われ少々困惑気味(そりゃそうだ)のようだ。そこへクラヴィスに何か一言いわれたジュリアスはムッとしたようで勝負に負けた方は勝った方の言う事を今日一日だけ聞くと言い出してしまったようだ。そんな経緯を書いている内に「フッ、チェックメイト」と先に言ったのはどうやらクラヴィスのようでした。
 この対局に愕然としているジュリアスにニヤッと見つめていた彼は、周りの視線(特にオスカー)をよそに部屋を出て行こうとする前に、ジュリアスの耳元に何か一言二言を語った瞬間ジュリアスは顔を赤くしたまま動けなくなってしまいました。・・・・・・クラヴィス様は一体、何を囁いたんだ〜っっ?!


 ―――時は少し遡り・・・。
ここは庭園にある謎の商人ことチャーリーさんのお店である。
「いらっしゃ〜い、俺の店はどこにでもない物が多いでー!」と威勢の良い声で商売をしているチャーリーである。 そこへ、どこから聞いたかわからないような噂が多く集まる夢の守護聖オリヴィエがいつものように賑やかに現れた。
「ヤッホー、元気してるー ところでさー、あんた知ってる? さっきリュミちゃんがさー、青ざめた表情で珍しくオスカーの執務室に向かって行ったんだよね。 そこで後を付けてさ聞いちゃったんだけどね・・・。 そしたら、な・何とあのクラヴィスがもう少ししたらジュリアスの執務室行くから部屋を空けるとかと言う話をしてたんだよ」
 オリヴィエが噂話を切り出した。
「ホンマですか〜、ビックリしましたわ〜。 ところでクラヴィス様はなんでジュリアス様の執務室に行かれるんですか?」とチャーリーも興味を持ったようだ。
「フフフッ、どうやらジュリアスとチェスをやりたいらしく行くみたいなんだよ」と答えた所・・・
「本当ですか? オリヴィエ様?!」
 そこに現れたのはこれまた王立研究院を預かる主任研究員のエルンストではありませんか。予期せぬ相手に驚いている2人は『何であんたがここに・・・?』という顔をしているのであったがさすがに立ち直りが早い。
「エルンスト、ひょっとしてアンタさー、あの2人のチェスが気になるんでしょー、はっきりお言い!」と、さすがオリヴィエだ切り返しが早い。
「わ、私は別に・・・」とオリヴィエに突っ込まれて口篭もる彼を見るなり先にチャーリーが。
「そんな顔をしないで下さいよ、エルンストさん。 ホントはジュリアス様の立てる戦略に興味があるから見に行きたいんでしょ?」とズバリ本音を言い当てた。
「よーし、そうと決まればジュリアスの執務室に出かけるよ、あんた達」とオリヴィエが言い出し。
「え〜俺も行くんですか、オリヴィエ様?」と、チャーリーが答えた所
「しかし、どうやってジュリアス様の執務室を調べるんですか?」とエルンストが行く気になり聞いてきた。
「それは、研究院の頭脳を生かせるあんたでしょ☆」と、オリヴィエが・・・やっぱりこうなるんでしょうね。
「では、庭から拝見させて頂きますか。 何か隠れられる物があれば、の話ですが」と、エルンスト。
「ここは何処だかわかっているんですか〜エルンストさん」
 チャ−リーが何処からともなく大きな茂みになるような作り物を取り出した。それを見ていたエルンストはやはり疑問に思い。
「あの、この物体はどこから取り出したのですか? 調べさせて下さい」と聞いてみた。
「ダメや、企業秘密や」とすかさずチャーリーは答え。
「はいはいそこのお二人さん、駆け引きはそこまでにしておいてじゃ行くよ!」と、いつの間にか一行のリーダーとなっていたオリヴィエが言った。
「あの〜オリヴィエ様? ・・・それでは、店はどうするんですか?」と心配なチャーリーに対してオリヴィエは、
「そんなのランディ達にやらせればいいじゃない。 もうじきここに来るじゃない、あんたもわかっているでしょう?」
何もかもご存知なのね・・・。
 こうして、3人と何となしに庭園の静かな片隅で昼寝をしながら話を聞いていたゼフェルもまたジュリアスの執務室へ向かう事になるのでありました。


 静かな宮殿の廊下を走る物音が響き渡る。
物音を立てている人物は、流れるような水色の髪をなびかせているのは水の守護聖リュミエールのようだ。いつも優しい微笑みを絶やさない彼が、今は青ざめた表情で普段は何かと自分が気にかけている闇の守護聖と、その仲が非常に悪い光の守護聖と、とても仲の良い炎の守護聖の執務室に向かっていた。その炎の守護聖の執務室に着くなりリュミエールは、ノックをするなり飛び込み叫んだ。
「オスカー、居ますか!」
「何だっ、リュミエールか?! 脅かすな!!」
 驚いた様子でこの執務室の主である、宇宙中のどんな女性もその一言で射止めてしまう天然のプレイボーイであり、武人としての強さと自信を兼ね備えた炎の守護聖オスカーが怒鳴り返した。その返事を聞いたリュミエールは悲しそうに答えた。
「相変わらす乱暴ですね、オスカーは・・・」と。
(・・・それはお前だろう)とオスカーは険悪な表情になりながら、ここに来た用件をたずねた。
「何のようだリュミエール、ん? 珍しいなお前が青ざめているなんて」
 その一言で我に返ったリュミエールは、ここに訪れた事を話し始めた。
「そうなのですオスカー、クラヴィス様が・・・」
 その言葉に眉をひそめるオスカーは先を促した。
「クラヴィス様がもうすぐジュリアス様の執務室に向かわれるのです」と。
 それを聞いたオスカーは怒鳴ってしまった。
「何だと?! ジュリアス様はそれを知っているのか」
 リュミエールは首を振りながらいいえと答えた。
「では何故ジュリアス様の執務室に・・・?」オスカーが疑問を口にした。
「どうやら、チェスをしに行きたくなった、とおっしゃっていました」そう答えた、リュミエール。
「何だってぇーー?!!」
 オスカーはどこまでも尊敬し崇拝しているジュリアスの身の安全に想いを馳せて思わず素っ頓狂な声音で叫んでいた。そして、リュミエールへ問い質した。
「リュミエール。 このことは、俺とお前しか知らないよな?」
 リュミエールは頷きルヴァの元に相談を持ちかけることを提案し、オスカーもそれに賛成しすぐに地の守護聖の執務室を目指した。

「おや? オスカーにリュミエールじゃないですか。あー、今日はいい天気ですねー」
 オスカーとリュミエールは聖地一いや、宇宙一の博学といわれる地の守護聖ルヴァの執務室に入るなり早々、にこにことのんびりした挨拶で迎えてくれた。オスカーとリュミエールは、何だか場違いな所に来たのではないかと思いお互いに顔を見合わせた。
「それにしても、あなた達2人が一緒にここへ来るなんて、珍しいですねー」
 ことの事態を全く知らないルヴァはのんびりとしていたが、2人の切羽詰った雰囲気を察し事情を聞いてみた。
「ええーっ、クラヴィスがジュリアスとチェスをしたくなったから、ジュリアスの執務室に行くって言ったんですかー?」と、さすがにさっきまでのんびりと本を読んでいたルヴァも驚いたようだが―――。
 しかし・・・
「あー、それにしてもクラヴィスからジュリアスの執務室に行くなんて以前から考えられないですねー、喜ばしい事ではありませんか?」と、続けた。
 オスカーとリュミエールの2人は、ルヴァがこう嬉しそうに言われてしまって先ほどまで大げさに事を捕らえていた自分達は、一体何だったんだろう・・・と思い始めてしまう。お互い目を合わせていたが最悪の場合を考えてしまうと聞かずにいられなくなった。
「ですがルヴァ様、もしもの事になりましたらどうすれば良いのでしょうか?」と、やはり心配になったリュミエールがルヴァに聞いてみた。
「あー、確かにそれはありえますねー。 では、様子でも見に行きませんか?」
 ルヴァが答えるとすかさずオスカーが切り出した。
「では、ルヴァ・・・もしもの事が起き時は、俺がジュリアス様をリュミエールがクラヴィス様を押さえつけるのはどうだろうか?」と。
「それで、私が仲裁に入って何事も無く解決すれば良いのですが、この際は仕方ありませんね」
 ルヴァが決断したので、3人の守護聖はもう、クラヴィスが向かっているのであろうジュリアスの執務室に速やかに向かうのであった。

 庭園にある、チャーリーのお店に戻って・・・・・・
何やら賑やかな声が聞こえてきたようだ。どうやら、風の守護聖ランディと緑の守護聖マルセル、品位の教官ティムカと占い師のメル達4人とその後ろに、精神に教官ヴィクトールがやって来た。それを見つけたオリヴィエは、チャーリー達にそれ見ろと言うような視線でウインクをした。
「こんにちはー、下さいなー」と、一番元気よく駆け込んできたのはメルだった。
「いらっしゃーい、メルちゃん。 今日は何のお菓子が欲しいのかな?」
 チャーリーもいつものようにメルと話しを始めていた。ランディがオリヴィエ達の姿を見かけて挨拶を終えた所で、オリヴィエはタイミングよくお店の留守番を話し出した。
「ねぇねぇ、あんた達も買い物に来るじゃあなくってさあ、たまには店番でもやってみたらどう? ね、チャーリー
「ハ・ハハ・・オリヴィエ様」とチャーリーはたじたじである。
「ええーっ、僕たちにお店の留守番ですか?!」
 すぐに驚いた返事を返したのはティムカだった。ランディはどうしたものかとついヴィクトールを見てしまい、今度はヴィクトールが言葉に詰まってしまった。
「ねぇ、お留守番ってこの前みんなでやった時と同じ事をすればいいの?」
 メルが答えてしまった。
「そうなんですわー、メルちゃん。 俺とヴィクトールさんが、入れ替わってしまったあの日と同じでいいんですよ、後でお菓子をご馳走するで」
「ヴィクトールさんが一緒ならば大丈夫でしょう」
 エルンストも、駄目押しの一言を付け加えた。
「おいおい、これは責任重大だぞ。 売上が上がるといいんだが、ランディ様はどうされます?」
 今度はヴィクトールがランディに店番の返答を回したが、ランディが答える前にマルセルが先に促した。
「ねえ、ランディ、折角だから僕たちも手伝おうよ。 みんな一緒だし、わっ、オ、オリヴィエ様苦しい〜」
 オリヴィエはいつものようにマルセルに”マルセルってば、本当に良い子だねぇ〜と言いながら抱きついていた。
「・・・マルセルまで、わかりましたオリヴィエ様。 でも早く戻って来てください」ランディがそう答えた。オリヴィエは二人に、作戦成功のウインクをした。

「ねえ、この緑のホワホワしたのは何?」
 三人がお店出て行く時に、メルは不思議そうな顔で尋ねてしまった。
「あ、これはですなー。 特注で頼まれた観察用の商品でっせ。 な、エルンストさん」
 チャーリーの一言である。
「わっ、コホッ。 そ、そうなんですよ」
 慌てた返答に、エルンストは咳き込んでしまったようだ。
「何だそうか。 こんな物を持って行くからつい、匍匐前進の訓練でもするのかと思ったぞ」
 現役バリバリの軍人ヴィクトールが、答えても仕方が無い物である。オリヴィエは再度この人工の茂みを眺めながら、お肌が荒れちゃいそうね・・・と思いながら、でもやっぱ、ジュリアス達のチェスはもっと面白そうねと結論付けていた。
「ま、そーゆー訳でね。 ビジュアル的にこの二人が面白そうだから、私も観察に付いて行く事にしたのよ。 後はヨロシクね
 オリヴィエが会話を上手に締めて、二人を引き連れて庭園を後にして行った。
木陰で昼寝をしていたゼフェルは、彼らの声で起きてしまい事の顛末をずっと聞いていた。
「面白そーな事が起きそうだな。 このままランディ達の店番の見学をしていても面白そうだが、ジュリアスの執務室はもっと面白そうだよな」
 ニヤニヤしながら揉め事を期待したゼフェルは、オリヴィエ達に見つからないように執務室に先回りをするように庭園を後にした。

 こうして庭園にいた三人は、ゼフェルに全部聞かれていたとは知らずに、お出かけの真の理由をランディ達に伏せたまま、ジュリアスの執務室を覗く為に宮殿に行ってしまった。




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